貴女様
闇が空を支配していた。
夜一は体を休めるべく、自分の部屋に入っていった。
体重を布団に預けようとした。そのとき。
後ろから夜一の左頬を掠めない程度に暗剣が布団に突き刺さった。
すかさず夜一は自分が持っていた暗剣で布団に突き刺さっているものが飛んできた方向に向けて暗剣を放つ。
サクッと良い音がした。
「お見事でございます。夜一様・・・・」
凛としているが、まだ幼さを臭わせる声が部屋に響く。
「やはりおぬし。砕蜂。」
「はっ。」
声の主は夜一の正面に現れた。
部屋には入らず、廊下に立っていた。
「なんじゃ。おぬし・・・入ってこぬのか?」
夜一の誘いに、頬を赤く染めて答える。
「めっ・・・めそうもございません。私は・・・・」
「良いじゃろ。ちこう寄らぬか。」
「いえ・・・ですが・・・・」
夜一の申し出を断り続ける砕蜂。
「相変わらずお堅いやつじゃのぉ。」
「よっ夜一様!!!!!?」
「良いじゃろ。昔はよぉ一緒に寝ておったではないか。いまさら恥じることはないぞ。」
「今と昔とでは話が違います・・・・」
砕蜂は夜一に無理矢理腕を引っ張られ、部屋に引きずり込まれる。
明かりは空から降り注ぐ月明かりが部屋に少し入ってくる。
それだけだ。
「何じゃおぬしは儂と寝るのが嫌なのか?」
「いえ・・・決してそのようなことは・・・」
「じゃぁ。良いじゃろ。」
「・・・・・・」
黙ってしまった砕蜂を先に布団にもぐった夜一。
砕蜂はじっと下を見ていた。
顔は真っ赤に染まっており、照れているのか、恥じているのかわからなかった。
夜一はそんな砕蜂を見上げて・・・否、見つめて口を開いた。
「砕蜂・・・・・」
「はい・・・・・」
「・・・・儂が嫌いか?」
「いえ!!誓ってそのようなことは・・・」
「なら・・・来い・・・・」
夜一は笑顔で自分の布団に空きスペースを作り、そこを左手でポンポンとたたいていた。
「では・・・・失礼いたします・・・・・」
強引な夜一にやっと折れて、砕蜂は夜一の隣に寝転ぶ。
砕蜂の顔はますます赤くなっていた。
夜一は自分の寝転んでいるそばに突き刺さっている暗剣を抜く。
「最近は毎晩じゃの・・・」
「近日は物騒になっていますので・・・・」
「ほ―――。おぬしも儂のことを心配してくれておるのか?」
「もちろんでございます・・・」
「お〜。それは嬉しいのぉ・・・・」
夜一は暗剣を懐に入れながら言う。
その言葉がよほど嬉しかったのか。砕ける蜂は耳まで赤く染めて照れていた。
「お!!照れておるのか?かわゆいやつよのぉ〜♪」
「あっ!!お辞めください!!!夜一様!!!」
夜一は照れている砕蜂の頭をガシガシと撫でていた。
夜はどんどん更けていく。
二人の笑い声はその漆黒の闇に溶けていく。
このときはまだ二人は、互いの運命の行末を知らなかった・・・・・
「んっ・・・・」
砕蜂は腕を伸ばし、伸びを行った。
身体の左側を下にして、寝返りをうつ。
うとうとと、砕蜂はまた夢の中に引き戻される。
と。思っていたら・・・・・
ゲシッドン・・・・
「・・・・・痛い・・・・」
砕蜂は腰をさすりながら起き上がる。
布団の上では夜一が大の字になって寝ていた。
布団は少し高い位置にあった。
決してベットという高さにはたわないが・・・・
―――だから一緒に寝るの嫌だったのに・・・・
昔。まだ四楓院家に入ったばかりの頃のことを思い出す。
夜一に気に入られ、『一緒に寝よう』と始めて言われた時の事を。
そのときは本当に嬉しかった。
だが。それは朝になると、幸せは痛みへと変わっていたのだ。
―――寝相さえ良ければなぁ・・・・
布団の上の夜一の幸せそうな寝顔を見ながら思う。
そろそろ起こさなければと、夜一の顔を覗き込む。
「よ――――――るいちさまぁ――――――っ朝でございますよぉ―――――っ」
「ん―――も―少しいいじゃろ・・・・・・」
「・・・・・」
そう夜一は告げると、くるりと毛布の中に包まってしまった。
そんな夜一を見て。砕蜂は額に手を当てる。
―――寝起き悪いんだから・・・・
最後の強行手段に出た。
「夜一様!!!起きてください!!!!」
威勢のいい声と共に夜一の包まっていた毛布を剥ぎ取る砕蜂。
夜一の身体があらわになる。
と。言っても、きちんと服は着ているが。
「へっ・・・・へっくしょいっ・・・・う゛―――っ寒いっ・・・・・・」
「朝でございます!!夜一様!」
頭をポリポリ掻きながら起き上がる夜一。
「いつも早いなぁ・・・・おぬしは・・・・っふわぁっ・・・・」
―――私は貴女様に起こされてるんです・・・・
・・・・・・とは口に出して言わない砕蜂なのです。
「シャキッとしてください!軍団長閣下!!」
「―――――――・・・・・おぬし・・・儂がその呼び名を嫌っているのを知っておろうに・・・・・」
「・・・・・・早くしてください。閣下!」
「わかった・・・・・・わかった!!だからその名で呼ぶな!砕蜂!!」
いかにもえらそうな地位の名を誰よりも嫌がっていたのは、その名をもつ夜一だった。
砕蜂の心理作戦も上手くいった・・・・否。ただの短気な砕蜂。
「今日の朝食は何かのぉ〜♪」
「今日はお魚の煮付けに・・・・」
「待て!!砕蜂!!何故知っておるのだ!!」
「見て参りました」
「・・・・・言うなよ・・・・・」
「煮付けにお野菜の」
「あ゛―――――――言うな!!楽しみなんじゃから――――っ!!!!」
廊下を二人で話しながら・・・否。騒ぎながら食堂に向かう。
四楓院家はとても広く、夜一の護衛の者や、多くの隠密機動隊に属する者が生活を共にしていた。
「お〜美味そうじゃの!!」
そう言って早々とご飯を食していく。
「物を喉につまらせないでくださいね。」
「わかっておる・・・・・・ぐっ」
「よっ夜一様っ!!!!どうぞ!!!」
あわてて水を渡す砕蜂。
それをあわてて飲む夜一
「ん・・・・・ぷは―――――っ死ぬところじゃったわ。ははは〜♪」
「笑い事ではありませんよ!!!もぉ――――っ!!!」
「あっはっはぁ〜砕蜂が牛になったわぁ〜」
注意を促したのに、それを聞きとめられず、しばし困惑気味の砕蜂。
それにつけくわえ。夜一に笑い飛ばされ・・・・砕蜂は本当に怒っていた。
「私がいなくなったらどうするんですか・・・・」
「!」
最近、とてつもなく強い虚が出現して、それの斥候に向かった何人もの隊員が命を落としている。
今日は夜一と砕蜂も行く予定なのだ。
「・・・・そんなこと儂がさせぬ・・・・」
「!!」
「安心しろ。儂がさせぬ。」
「なりません!私は夜一さまの護衛です。そんな私が守られては・・・・」
「・・・・・"護衛を助けてはならぬ"という規則がどこにあるのじゃ・・・・」
「!」
「儂はおぬしに護られ、また儂はおぬしを守る。それはならぬのか?」
「・・・・夜一様・・・・・」
やさしい夜一の言葉を胸に刻み。先ほどの怒りなどもうすっかり忘れていた。
そんな砕蜂をこの上なくやさしい表情で見つめているのは、彼女が護りたいと思っている夜一だった。
「いただきぃ〜!!!!」
「よっ夜一様!!!!」
砕蜂の膳から夜一は魚を取り上げる。
「夜一様のにもございます!!!」
「もう食うたわ!礼を言うぞ♪砕蜂♪」
先ほどの良い空気を全くにおわせない二人だ。
その二人の性格が互い距離を美味く保っているのだろう。
笑い声は廊下まで響いていた。
「今どきの虚はこんなところに出没するのか?」
「・・・・さぁ?」
いかにもキャバクラっぽいところの前で夜一と砕蜂は立っていた。
ギラギラとした看板に文字が書かれていた。
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
沈黙が続く。
なんでも、今までその虚はキャバクラ周辺に出現しているらしい。
なので二人は一応張り込みを試みたんだが・・・
「ガセ・・・・じゃなかろうな・・・・」
「・・・・・違うと思います・・・・」
とにかく人には見られないのでその場に居てもいいのだが、二人は嫌だったらしく(普通は嫌)、半歩後ろの建物の上から観察することにした。
「寒いですね・・・・」
「そうじゃの・・・・虚ばかりはこちらからで向いていけぬからのぉ。しばしの辛抱じゃ・・・」
「・・・・そうですね・・・・」
「気長に待とうか・・・・」
「はい・・・」
虚の出現を待ち始めて30時間。
そろそろ疲労が出てくる頃だ。
砕蜂は重くなるまぶたと戦っていた。
そんな砕蜂に気がついたのか。夜一は自分の方に砕蜂の頭を傾けさせる。
「よ・・・夜一様!!!!?」
「少し休め。」
「いえ・・・ですが、私よりも、夜一様が・・・・」
「儂は大丈夫じゃ」
「・・・・・・・・・・・」
「大丈夫じゃ」
「おっ・・・・お言葉に甘えて・・・・・」
「良い。」
砕蜂は夜一の方に頭を預け、体重を半分預けた。
夜一の優しく暖かいぬくもりの中で夢に溺れていく。
甘い甘い夢に・・・・・・・
ドン!!
大きな地響きと共に虚が現れた。
―――来よったな・・・・・・・・・・
「ギェ―――――――――――――――――――――ッ!!!!!!!!!」
耳の鼓膜が破れそうなほどすさまじい鳴き声だ。
その鳴き声で砕蜂が目を覚ます。
「うわっ!!!!・・・・・・・・夜一様!!!!!!!」
「すまんの。起こしたか・・・・」
夜一は砕蜂を姫様抱きをして、宙を舞っていた。
「おっ降ります!!!!夜一様!!!!!!」
「よ―寝とったからできれば起こしとうなかったんじゃが・・・・」
「いえ。もっと早く起こしてくだされば・・・・・」
「良いんじゃ気にするな。」
「そう言うわけにはいきませんよ・・・」
「それより今はこっちじゃ・・・」
「そうですね・・・・今は・・・・・」
「「二人であいつを倒す策を考え、情報収集をすること」」
あるビルの上で砕蜂を降ろす。
「ありがとうございます」
「良い。それより・・・あいつじゃ・・・」
夜一が見上げるとそこには虚が。
この町に居た死神の霊圧もしばしば感じられた。
「来るぞ!!砕蜂!!」
「はい!!」
二人は互いに逆の方向へと飛んだ。
二人は同時に暗剣を虚に投げつける。
―――やった!
剣は刺さった。しかし。
虚はぴんぴんしていた。
―――何故だっ・・・・
―――何か仕掛けがあるのか?
虚の様子を伺いつつも、攻撃を緩めない二人。
―――「「隙をつくらぬと」」
―――「「負ける・・・・・・・・」」
虚は手足が触覚だ。
その触覚を自在に使い、攻撃してくる。
虚の中に何本の触覚があるのだろう。いつしか二人の周りには何十本もの触覚があった。
―――くそっ・・・・邪魔だっ・・・・
触覚をうざく思っていたのは砕蜂だけではなかった。
夜一もまた、うざったく思っていた。
―――ちっじゃまじゃの。これじゃぁ本体に近づけん・・・・・もしや・・・それが狙いか?
夜一は考えた。このまま二人で戦っていても、情報はおろか、命が危険に犯されてしまう。
―――出来れば砕蜂だけでも逃がせれたらええんじゃが・・・・
考える。必死に思考を凝らす。・・・・案はないだろうか。
砕蜂だけでも逃がせれる、案は・・・・・・
そう思っていた時。少し、ほんの少し砕蜂を目の端で見ていたとき。
虚から一瞬目を話していた。その瞬間を、虚は見逃してはいなかった。
シュルッ
「!!」
「夜一様!!!!」
スルリと触覚が伸び、夜一の体を掴む。
夜一は動きを封じられてしまった。
―――くそっ・・・・・
―――夜一様を助けなければっ・・・・・・・
夜一は必死にもがく。だが、触覚は一向にはずれない。
持っていた暗剣で切ろうと試みたが、なかなか時間が掛かりそうだ。
夜一の困惑とした表情を見て、砕蜂は思う。
―――夜一様が苦戦している・・・・どうしよう・・・・
少しためらう。だが、そんなためらいは長くは続かなかった。
―――何を迷っているのだ!私は夜一様をお護りしなければならぬのにっ・・・
自分の命に代えても、護りたい。そう、誓った小さな胸にもう一度確かめる。
腰のポケットから暗具を取り出す。
―――自分の持っている力を全て使いつくしても、夜一様だけは
―――砕蜂だけは・・・・・・
―――「「絶対護るっ」」―――
自分の決意を秘め、砕蜂は暗具を取り出す。
「はぁっ!!!!!」
自分に出来る最善を尽くす。
砕蜂と夜一は同じことを考えていた。
砕蜂は持っている、ほとんどの暗具を使って虚に攻撃する。
だが、なかなか効果は表れない。
砕蜂は自分の残り少ない暗具を見る。
―――どうしたら・・・・・・
その頃、夜一はずっと自分の暗剣で触覚を切ろうとしていた。
だが、なかなか硬く、切れない。
―――くそっ・・・何故じゃ。これじゃぁ・・・・砕蜂が・・・・
必死に切ろうとする夜一に気がついたのか、いつの間にか虚の顔が自分に向けられていた。
虚が大きな口を開けて、夜一の方を見ていた。
―――なんじゃ・・・・
少し虚の体が後ろに反れた。
と思うと、今度は勢いよく、前に屈む。その力を利用して、口から何か吐いた。
―――なっ・・・・・これはっ・・・・・
―――夜一様っ!!!!!!
砕蜂は一瞬で夜一の前に来た。
「ぐっ・・・・・・」
「砕蜂!!!!」
砕蜂の右肩を包んでいた布は溶け、皮膚が露わになっていた。
その肩の皮膚も、やけどをしたかのように、赤くなっていた。
「砕蜂!!!!大丈夫か!!?」
「だっ・・・・大丈夫です・・・・・夜・・・ち様・・・・お怪我は?」
「無いっ・・・・」
「何よりです・・・・くっ・・・・」
どうやらあの口から吐いたものは、酸性だったようだ。
砕蜂はやけどを負い、その痛みに耐えていた。
虚の吐いた液体により、夜一を縛っていた触覚が緩んだ。
よく見ると、触角にさっきの液体が掛かっていたようだ。
―――これなら出られる・・・・
夜一はそこに暗剣を突き刺し、解く。
―――良し。
触覚が解け、砕蜂を抱き、夜一は空を舞う。
「夜一サン」
「!!!」
聞き覚えのある声が夜一の後ろからした。
「喜助・・・・遅かったの。」
「いろいろ立込んでたんっすよ。」
「まぁ良い。此処はおぬしに任す。」
「了解です。」
そう言うと夜一は喜助の隣を横切って行った。
「・・・・・・・夜一様・・・・・・・」
意識が朦朧とする中、砕蜂が言葉を紡ぐ。
「大丈夫か?砕蜂・・・・」
「・・・・・あの・・・・液体には毒が・・・はいって・・・・いたようです・・・・・・」
「そうみたいじゃの・・・・」
砕蜂を抱き、空を駆ける。
いつの間にか二人は尸魂界に居た。
「もうすぐ、4番隊じゃからな・・・・」
「・・・・・・」
「もう少しの辛抱じゃ・・・」
「・・・・・・」
「?・・・・砕蜂?・・・」
砕蜂は考えていた。
大好きな・・・・
すごくあこがれている・・・・
尊敬している・・・・
夜一の暖かく、強い腕に抱かれ思う。
これからのことを・・・・
「私を置いて行ってください・・・・」
「なっ何を言っておる!!!!」
「・・・・私など・・・・もう・・・・」
「馬鹿なことを言うな!!!」
「足でまといで・・・」
「足でまといじゃない!!!!」
「!」
夜一は砕蜂を抱く腕を強める。
「放せといわれても、儂は放さんぞ・・・・・砕蜂・・・・」
「・・・・・・夜一様・・・・・」
砕蜂の瞳には涙が溜まっていた。
強く抱きしめられ、夜一をしたからあおる。
否。見つめる。
「すみません・・・・夜一様・・・・」
「良い・・・・儂はおぬしが好きじゃ・・・」
「・・・・夜一様」
どれだけ望んでいた言葉だろう。
どれだけ伝えたかった言葉だろう。
自分がずっと言おうと思っていた言葉をこの人はなんて簡単に伝えてくるんだろう。
そう。思いながら、砕蜂はそっと口を開いた。
「・・・私も・・・・す・・・・大好きです・・・」
「・・・知っておった・・・」
「えっ・・・・」
「ずっと聞きたかった・・・・・・・」
「・・・・・そうだったんですか・・・」
「案ずるな・・・・・身を預けろ。この儂に・・・」
「・・・・はい」
強く、優しい腕に包まれて、砕蜂はこの上無く幸せな気持ちになった。
このまま死んでもなんの悔いはないと・・・
それほどまでに、夜一のことが好きだったのだ。
『瞬神夜一』
夜一はこうも呼ばれていた。
その夜一が砕蜂を四番隊隊舎まで向かう。
砕蜂は先ほどから返事が無い。
寝たのか、毒が回っているのか、解らない。
―――どっちにしても、早く運んだ方が、良いな・・・・
夜一は急ぐ。
―――あと・・・80歩・・・75・・・・・
一歩一歩確実に近づいていく。
急ぐ気持ちを抑えながら、確実に地面を、屋根を飛んでいく。
ダッ。
四番隊隊舎に着いた。
「誰かおらぬのか!!!」
「はっはい!!!」
隊舎から出てきたのは四番隊服隊長の虎徹勇音だ。
「こやつを診てやってくれ」
そう言って砕蜂を見せる。
「少しお待ちください。すぐに担架を・・・・誰か手伝ってください!!」
虎徹勇音は隊舎へと走って行った。
「良かったの。もうすぐみてもらえるからな・・・・」
「・・・・・」
「・・・・砕蜂?・・・砕蜂!!!!!!」
「・・・・・」
夜一は砕蜂の反応のなさに、驚き、身体を揺さりながら、名前を呼ぶ。
砕蜂は一向に返事をしない。
「・・・・・・・そっ・・・・そんな・・・・砕蜂!砕蜂!!!!!」
「・・・・・・」
「砕蜂―――――――――っ!!!!!!!!!!!!」
砕蜂を抱きしめる。
強く、強く抱きしめる。
「すまない・・・・砕蜂・・・・・・」
「m・・・・・くッ・・・・・苦しい・・・・」
「!!!」
夜一は急いで、身体を開放してやる。
「は―っは―っ・・・・・・・・なっ何をなさるんですか!!夜一様・・・・」
「砕蜂・・・・・生きて・・・・・」
「生きててはいけませんか?・・・・」
「いや・・・・そういうわけではない・・・それより・・・毒は?」
「・・・・・あ〜あれ・・・だいぶよくなりました。」
「・・はっ・・・そうなのか・・・よっよかったぁっ・・・・・」
「夜一様?」
夜一は、その場に砕蜂を抱いたままへたり込む。
そんな夜一をしたからじっと見つめる砕蜂。
「儂はてっきりおぬしが・・・」
「ご心配をお掛けしました・・・・・」
「よい。念のために診てもらうが良い。」
「はい・・・・」
互いの顔が全部ちゃんと見れないほど二人は近くに居た。
吸い込まれそうな夜一の瞳をじっと見つめる砕蜂。
つい愛でたくなる愛らしい瞳をじっと見つめる夜一。
このときばかりは、二人の時間は止まっていて。
その間に入る者も居なくて。
いつまでも、二人は互いを見ていたかった。
だがそれは長くは続かない。
「四楓院様・・・・砕蜂さんを・・・」
二人の時間を破ったのは、担架を取りに行った虎徹勇音だ。
誰か助っ人を頼んで、担架を持って来た。
「ほら。砕蜂。乗るのじゃ。」
「・・・・・はい」
砕蜂は少し名残惜しげに返事をし、夜一が担架に乗せる。
今度は今間でと違う感じで夜一を見上げる。
先ほどのように、顔が間近にあるわけでもないし、近くから声が聞こえるわけでもない。
砕蜂はどれだけ今までの体制が良かったことか。
夜一を見上げながら、頬を赤らめて思う。
「どうしたのじゃ。もしや寂しいのかの?」
「ちっ違います!!!」
砕蜂は夜一が見えないように、別の方向を向いた。
そんな砕蜂を見て、夜一は耳元でささやく。
「可愛いやつよの。からかい甲斐があるの。」
「夜一様!!!!」
勢いよく振り向いた砕蜂と夜一の唇が当たった。
硬直する砕蜂。
あまり驚いてない夜一。
数秒たって、夜一が一歩下がり、言う。
「びっくりしたの。」
「狙ってましたね!!?」
「なんのことだかさっぱりじゃ♪」
「夜一様!!!!」
夜一はいろいろ計算してあのようなことを言ったのだ。
それを砕蜂はわかっていた。
だが、それを深く追求する気力も体力もない。
ただ、怒るよりも嬉しかった。
その嬉しさを隠すために、怒った。
そのことを夜一はわかっていた。
―――本当に可愛いやつじゃ・・・・
空はそんな二人を暖かく包むように、真っ赤だった。
―――貴女様の隣にいたい・・・・
ひそかにそう思う砕蜂には夕日の赤が少し強かった・・・・・
後書き―――
普通(?)の小説に後書き書くのは初めてです。
巧海×晶のは全然後書きというか反省を書いてませんし・・・・
いまさら書く気にもなれませんといいますか・・・・・
そんなことはおいといて。
どないでしょうか今回のは。
夜砕です。念願の・・・・♥♥
きゃ〜下手。
もっと上手く書けたら良いのに・・・・ゲンナリ。
しかも長さを全然考えずに書いたから、すっごく長くなった・・・すみません・・・
これからは短くして、続き物にします。
これから増やしていく予定なので、よろしくお願いいたします。
2005/12/17/狸作
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