風邪






「へっくしゅんっ!!!!」

風邪か?ヤバイな・・・・

夕日が沈みかけている頃、私は瀞霊廷に居た。
夜一様から言付けを頼まれて、五番隊隊舎から帰っているところだ。

それにしても・・・風邪かぁ・・・夜一様にうつさぬよう注意せねば・・・・

少しばかり寒さが厳しくなってきたので急ぎ足で隊舎に帰る。



「砕蜂ただいま戻りました。」
「ごくろうじゃった。はよ入って温まれ。」
「失礼します」
私は夜一様の声に誘われて中に入る。
夜一様の部屋では七厘があり、火を焚いていた。
「砕蜂が帰ってくる前に準備をしたんじゃ。だいぶ暖かくなった。」
「おっ恐れ入ります・・・・・」
「何じゃ砕蜂。もっと近こう寄らぬか」
「いえ・・・・・私如きがそんな・・・・」
「何を申しておるのじゃ。ほれ。」
「・・・・失礼致します・・・」
私は夜一様に手を引かれ、夜一様のお隣に座らせてもらう。
夢でも見ているのではないのかという喜びと都合のよさ。
なんて幸せなんだ。
「・・・・?砕蜂?おぬし顔が少々赤いぞ?大丈夫かの?」

やばい・・・風邪ということを忘れていた。

「だっ・・・大丈夫です・・・・」
「そうか?でもやはりおぬし・・・」

このままでは私は隣に居られなくなる・・・・
御そばにいたいのに・・・・

そう四苦八苦していたら誰かが部屋の外から声をかけてきた。
「軍団長閣下!!」
「何じゃ・・・・」
「山本元柳斎重國様がお呼びです。」
「総隊長殿か・・・・わかった。今行く」
夜一様は私の隣で立ち上がり私に背を向けていく。
「砕蜂・・・・・・」
「はい!」
「好きなだけ居ていいからな・・・・・」
「・・・・・はい・・・・」
「行ってくる・・・」
「お帰りをお待ちしてます・・・・」
夜一様は私にそう言って部屋を出た。

『好きなだけ居ていい』とはどういう意味だ。
私はお帰りをこの部屋で待って居ていいということだろうか。
いや。自分に都合の良いように考えすぎだ。

私はしばらく夜一様の部屋に居た。



何時間たったのだろう。
いつの間にか私は眠っていた。

あ!夜一様!!

そう思い、急いで起き上がって布団が敷かれている方に目をやる。
そこには誰もその布団に入った形跡がない布団が一式ひかれていた。
まだ戻られていないということを悟るのにそう時間は掛からなかった。
私は部屋を出た。
廊下からは外が見え、月が輝いていた。
月の光が眩しかった。

夜一様もこの月をご覧になってるだろうか。

ふと思う。いまだ帰らぬ私の大切な人のことを。
早く帰ってきてほしいと思うと同時に今すぐ飛んで行きたいと思う。
その日はずっと夜一様の部屋で過ごした。


「ん・・・・・ふぉん・・・・砕蜂・・・」
「・・・・夜一・・・・・・さま?・・・・・」
声が自分の上から降ってきた。
その声の持ち主を私は知っていた。
「夜一様!!!!!」
勢いよく身体を起こす。
ゴチンッ
私の頭が夜一様のあごにぶつかった。
「っ・・・・すっすみません・・・」
「いや・・・大丈夫じゃ・・・おぬしは?」
「私は夜一様より痛くありませんので大丈夫です・・・・」
「そうか。良かった。」

なんたる失態・・・・最悪だ

そう反省をしていたら夜一様が声をかけてきた。
「砕蜂。今から出かけるしたくは出来るか?」
「え?」
「任務じゃ!」
すごく楽しそうに言う夜一様。
その強く笑う笑顔が好きだ。
「はい!!」
私と夜一様は任務へ向かった。



任務の途中のこと。
私はだんだん熱が上がってくるのを感じていた。

このままでは夜一様の足手まといになる・・・・

どうしたら良いのだろう。
そんな私にはまだ気がついておらず。夜一様が声をかける。
「いいか砕蜂。儂が合図したら、雀蜂で攻撃するのじゃ」
「わかりました。」

こうなったら限界まで戦ってやる。
私は自棄になっていた。
夜一様の合図があった。
私は敵に向かって雀蜂で攻撃する。
が。しかし。相手もこちらの攻撃に気がついていたようだ。
私の攻撃はかわされてしまう。

くそっ・・・・・・身体が言うことを聞かない・・・・っ

―――おかしいの。いつもならあれくらい自分でフォローするんじゃが・・・・
身体が思うように動かず、私は体制を崩したまま地面に落ちる。

いつもならこれぐらいどうってことないのに・・・・

いつもならかわされたらそのフォローを自分でできるが、今は違う。

くそっ・・・・・

自分の自己管理の無さに苛立ちを感じていた。
―――砕蜂の様子がおかしいの・・・・どうしたのじゃ・・・
私は相手が攻撃してくるのも判っていなかった。
「砕蜂――――――!!!!!後ろじゃ!!!!!」
「!!!!」

あぁ本当に私は夜一様の足手まといにしかならない・・・・
このまま私は一緒にいてもいいのだろか・・・・

ふと思う。
走馬灯の様に夜一様との思い出が頭の中を駆ける。

夜一様の為に死ねるなら本望だな・・・

私はもう、地面を這う力も残っていなかった。
「すみません・・・夜一様・・・・」
「砕蜂!!!!よけるのじゃ!!!!」
貴女の声はとてもきれいで。
ちゃんと私に届いていました。
今までありがとうございます。
大好きです・・・・夜一様・・・・・



「砕蜂!!砕蜂!!!!!」

あぁ。夜一様の声が聞こえる。
天国でも私の欲は聞き入られたのか
「砕蜂!!!!!」
いや現実味有りすぎだ。

私は目を開ける。
するとそこには、夜一様の姿が・・・・
「夜一様!!?」
「良かった・・・・一時はどうなることかと・・・・」
「え?・・・」
「おぬし。五番隊の隊舎に行ったことを覚えておるかの」
「はい。」
「五番隊隊舎から帰っている途中におぬし倒れたのじゃよ。」
「えっ・・・・・」
「総隊長から連絡があっての。おぬしを迎えに行ったのじゃ。」
「え・・・・」

どういうことだ?私は夜一様の御そばにずっと・・・・

「三日間ずっと眠りっぱなしだったのじゃよ。」
「そう・・・なんですか・・・」
「一時はどうなるかと思うたが、良かった。」
「すみません・・・ご心配をお掛けして・・・・」
「いや。いいのじゃ。おぬしがいつ目を覚ますかわからんからの。ずっと此処におったのじゃ」
「すみません。私如きのために大切な時間を・・・」

あぁなんて事を私はしてしまったのだ・・・・
夜一様に迷惑を掛けて・・・・・・

「・・・・・迷惑ではなかったぞ」
「えっ・・・」
「儂はおぬしの傍に居れてよかった。おぬしの風邪にも感謝しておる。」
「夜一様・・・・・」
「儂はおぬしが・・・・へっくしょいっ」
「夜一様!!!!」
私は急いで自分の上に掛けられている掛け布団を夜一様に掛けようとした。しかし。
「良い。こうすればもっと暖かいしの。」
「よっ・・・夜一様?!!!」
夜一様は私の布団に潜り込んできた。
「ほ―れ暖かいわ。」

それは私が今まで入っていたからですよ。

夜一様は布団の外に居たので、身体が冷えていた。
その肌の温度を、夜一様の身体に当たる自分の皮膚の上から感じる。
「冷えていますね・・・・」
「案ずるな。おぬしのせいではない。砕蜂」
「・・・・・・」
どこまでも優しい夜一様。
そんな夜一様のことがすごく好きで・・・・・
「砕蜂・・・」
「はい。」
「儂が風邪を引いたら、おぬしが看病してくれるんじゃろ?」
「・・・・・・」
少し頬が赤くなるのを感じながら。
私は言う。
大切な、大好きな人へ。
「もちろんです!!夜一様」

布団の中は一人のときよりもずっと暖かくなり、私はその暖かさに熱りながら、
夜一様のお話を聞くのだ。


風邪を引くのもまんざらではないな。






















後書き―――
夜砕その2〜♪
今回は前回よりも短めです。
可愛い砕蜂〜☆
マジ最高だぜよvv
なんか砕蜂は受けですね。
私は砕夜もありかと思うんですが、なんか上手く書けませんね。
友達いわく砕蜂は受けだそうで。まぁ受けだけど・・・・でも攻めもいけそうな感じだけどなぁ。。
今回は風邪。
私も風邪です。しかも今日は学校休んでるし・・・・
何やってるんだよ。みたいな。
しかも熱あるし・・・・・
というわけで、(どういう訳?)風邪にしました。
今度のテーマは何にしようかな★☆
リクとかあったら、言ってくださいね。
それでは。狸でした。
2005/12/19狸作




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