大きな愛で いつも包んでくれた 大きな愛で 私を抱いてくれた 大きな愛を いつも注いでくれた 貴女が好きで好きで 大好きと叫ぶほど好きで 愛してると体中が言っている 表現できないほど好きで 貴女が居なくなった時 すごく痛かった 夜一様……… 私の愛は未だ変わってはいませんよ もう一度だけ私を愛してくださいCat and Bee The love ached badly that thougt rose's thorn. version:bee 時はもう蕗の薹が芽を大きくだし、庭を覆っていた雪はすっかり溶けていた。 副隊長室から見える庭の景色も変わっていた。 白で占めていた部分は無くなり、緑や黄色等、色が多彩になった。 夜一様から告白された時、心臓が止まりそうなくらい驚いた。 息が出来なくなるくらいうれしかった。 私達はあれからいつも一緒に行き帰りをしている。 先日の誕生日には、可愛い櫛と手鏡を頂いた。 どちらも高級品だ。 私はいまさらながら、どれほどの方に手編みの襟巻を渡したのか思い知らされる。 すみません… 一応、心の中で謝っておいた。 「砕蜂!」 「夜一様っ!どうなされたんですか?」 「いや。別にたいした用事は無いのじゃ。…唯…」 「唯?」 「顔が見たくてな。」 「!!!」 ドキッとした。 またサラリと甘いことばを紡がれた。 そのことばで私の顔はみるみる紅くなっていった。 「お?うれしいか?砕蜂…」 「ちっ違いますっ!」 「そう言うな!うれしいんじゃろ?」 「違いますってばぁっ!」 夜一様はいつも私の心を見抜いていた。 夜一様は、私の心の中まで見えているようだ。 「それにしても…いい天気じゃのぉ」 「…はい…」 暖かい陽気が、私たちをそっと包んでいた。 縁側にふたり並んで座っていた。 「砕蜂。少し散歩に行かぬか?」 「えっですが、仕事が……」 「相変わらずお堅い奴よのぉ」 「夜一様っ!」 「大丈夫じゃ。置き手紙はしてきた。」 「置き手紙ですか!?」 夜一様曰く、隊長室の机の上に『副隊長と散歩に行ってくる』と書いた紙を置いてきたらしい。 『行ってくる』じゃぁ、決定してるじゃないですか。 私は未だ、行くか決めかねていた。 だが、夜一様はついてくるとわかっているのだ。 やっぱりこの人にはかなわないな。 「仕方ないですね…」 「よしっ!さぁ参るぞ!」 「あっ夜一様っ!」 夜一様は私の手をグイグイ引いて行かれた。 私はその後を残されないようについていく。 しっかりとしっかりと…… しばらく歩くと、夜一様の好きな草原にでた。 そこは、瀞霊廷内だとは思わせない、自然に囲まれた場所。 すぐ傍には山が迫っていて、山の入り口が手の届くところにあった。 草原には、草花が生い茂り、一面は小さな花畑を思わせた。 「綺麗ですね…」 「嗚呼……」 息を飲む程の美しさに、私たちは唯々立ち尽くしていた。 多彩な花々の花びらが蝶と一緒に舞っていた。 「ちょっと歩くかのぉ…」 「はい」 夜一様とふたり。 手を繋いで歩き始めた。 花々を踏まないように慎重に。 「もう、花見の時期じゃのぉ」 「そうですね…」 しばらく歩くと、桜の木の下に出た。 そこには、綺麗な桜が満開だった。 いくつかの桜の花びらが風に煽られ、舞っていた。 「……」 「……」 私たちは沈黙した。 その桜が綺麗と言うこともあるのだか、夜一様がなんだか寂しそうな…… それでいて、つらそうな表情をされていたから。 何もかける言葉が無かった。 急に心細く感じた。 夜一様が遠くへ行ってしまいそうで。 胸が痛かった。 私は手に力を入れて、ギュッと夜一様の手を握った。 「砕蜂?」 「……遠くに行かないでくださいね……」 「……何を言っておるのじゃ……」 夜一様は私に微笑んでくださった。 「儂がお主を置いて、どこかに行くものか……」 「……」 「……行くときは一緒じゃ……」 「夜一様……」 心の底からうれしくて。 心の底から信じてた。 貴女の言葉だから。 でも同時に貴女の表情が一瞬曇ったのを、私は見ていた。 夜一様…何を考えていらっしゃるのですか? 夜一様とふたり、花々を見て暫らく散歩をした。 夜一様の傍に居られるのを、本当に喜んでいた。 一番近い存在になれて嬉しかった。 夜になって、床に着こうとしていた時。 夜一様が私を尋ねて来られた。 「砕蜂…ちょっといいかの?」 「はい…どうぞ。」 私は部屋の中央に立っていた。 襖があけられ、夜一様の姿が見える。 「砕蜂。一緒に眠らぬか?」 「はい……えぇえ!?」 驚いた。 あまりにも唐突におっしゃったから。 「嫌…か?」 「いっいえ。決して嫌なわけでは…」 「じゃぁ、決まりじゃ。儂の部屋まで来てくれ。」 「え?何故です?」 「砕蜂の寝台は小さいからのぉ。じゃぁ待っとるぞ。」 そう、言い残して、行ってしまわれた。 これじゃぁ、私が夜這いしに行くみたいだ… すごくいろんなことを胸に思い描きながら、部屋に向かった。 「夜一様……砕蜂です」 「おぉ!入れ」 「失礼します。」 恐る恐る、夜一様の部屋な入る。 きれいに片付けられた部屋。 いつ見てもきれいだ。 「さぁ。おいで。砕蜂……」 「……はい……」 その言葉は本当にやさしかった。 甘い蜜のような声。 初めて聞いた。 寝台で一緒に眠る。 それがどんな意味をもっているのかわからなかった。 ただ、もう、子供扱いされるのは嫌だった。 ドキドキしながら、夜一様の隣へ行く。 「どうした?来ていいぞ?」 「……はい……失礼します。」 私は、そっと夜一様の隣に潜り込む。 「砕蜂…」 「はい……」 その返事が全ての同意だった。 貴女に全て身を預けると言う。 唇に甘い感覚。 忘れられない。 一生残る感覚だった。 一緒に眠った夜から、数日が経過していた。 その日は私は残業だった。 夜一様には先にかえって頂いた。 久しぶりに、一人で歩く夜道。 空に見える月がきれいだった。 暫らく歩くと、人の気配を感じた。 こんな夜遅くに誰だ…? 私は建物の影に身を隠し、話を聞こうとした。 「本当にいいんっすか?夜一サン…」 「あぁ。いいのじゃ…」 夜一様と浦原隊長? あの二人は昔から仲が良いと聞いていた。 だから、話をする分には別に気にならなかった。 気になったのは、二人の雰囲気だった。 「砕蜂ちゃん……泣きますよ?きっと……」 私?…なんの話をしているんだ?… 「あぁ。わかっておる……でもな喜助…あの子は…」 「……?」 「あの子には…日の当たる人生を歩ませたいんじゃよ…」 日の当たる?どういうこと?? 話の内容が飲み込めなかった。 何を話しているのかわからなかった。 「夜一サン……」 静に少し重い沈黙が、二人の間に漂っていた。 「夜一サン…明日は…」 「あの場所から行くんじゃろ。わかっておる。」 「そっすか…じゃぁまた。」 「嗚呼。」 「おやすみなさい」 そう言って、浦原隊長は帰っていった。 夜一様も暫らくそこに、たたずんで居られたが、帰られた。 私はその場に立ち上がった。 怖れていた事がもうすぐ来る。 漠然としていた不安が今、大きくなった。 夜一様…… 気持ちばかりが、大きくなっていく。 「夜一様…」 「どうした砕蜂……」 月の光が廊下を照らしていた。 廊下から、夜一様に声をかけた。 「入れ……」 「失礼します。」 私は襖を開けた。夜一様の匂いがする部屋に入る。 「どうした?」 「……一緒に寝ていいですか?」 「……あぁ。来なさい。」 夜一様の傍に寄る。 そっと布団の中に入る。 「何かあったか?」 「……いえ。傍に居たいんです……貴女の傍に……」 夜一様の腕をとった。 ぎゅっと抱き締める。 「どうした?今日は甘えたじゃのぉ…」 「……」 夜一様がやさしく頭を撫でてくださる。 いつからこんなに、わがままになったのだろう。 自分だけの夜一様で居てほしい。 いつから、そう思うようになったのだろう。 私の目にはいつのまにか涙が溜まっていた。 「……砕蜂?」 積極的にさせるのも、私の気持ちを不安にさせるのも全部貴女がしたこと。 私の顎を持ち上げ、夜一様のきれいな瞳を見上げる。 「……愛しておるぞ…砕蜂……」 「…本当ですか?」 「あぁ。証拠を見せてやるぞ……」 唇を寄せられる。 夜一様だけを感じる。 大好きな貴女だけを感じる。 朝になれば貴女は何処かへ行くんですか? 聞けない質問を心の中で聞く。 愛してる その言葉を胸に秘め、一秒でも長く、夜一様を感じていたかった。 薄れ行く意識の中、貴女だけを求めていた。 ことりの鳴く声で瞳を開けた。 何時の間に……夜一様… いつのまにか、私は自分の府屋にいた。 まだ、目の前に靄がかかったような、感じだった。 窓を開けると暖かい日差しが迎えてくれた。 「起きてください、副隊長!軍団長閣下が!」 「夜一様がっ?!」 布団から勢いよく出て、すぐしたくをして部屋を出た。 襖を開けるとそこは、いつもとかわらぬ夜一様の部屋。 唯ひとつ、夜一様がたりないだけだった。 部屋の中心に一枚の紙が落ちていた。 『儂は喜助と共に行く』 そう書いてあった。 何も考えられなくなった。 頭が真っ白になった。 …夜一様?… 状況が飲み込めなかった。 まわりにいた者は忙しく動きだした。 ふと。昨晩、夜一様の言っていた言葉が思い出された。 『あの場所から行くんじゃろ。わかっておる。』 あの場所…… 私は部屋から弓で弾かれたように、飛び出した。 なぜあの場所がわかったのか。 何故確信をもってあそこだと思えたのか。 今でも不思議だ。 私はあの場所についた。 夜一様の好きな場所。 「夜一様ぁっ!」 きれいな長い黒髪が目についた。 すぐわかった。 貴女だって。 「砕蜂?」 驚いている様子だった。 「………はい」 私は数歩、歩み寄った。 「私も……私も連れていってください!!」 「…砕蜂」 私は叫んでいた。 どうしても一緒に居たかった。 どうしてもあやつのもとへ夜一様を行かせたくなった。 「……無理じゃ…」 「お願いです!連れていってください!!私もっ」 すがるように叫んだ。 身体全身から叫んだ。 貴女をどうしても止めたくて。 「…無理なのじゃ砕蜂……」 「夜一様っ!!」 知らぬまに足が勝手に動いていた。 夜一様の方へずんずんと。 手が届きそうな位置まで来た。 これで夜一様をっ… 手をのばした瞬間、私の手はするりとかわされ、代わりに捕まれた。 「夜一様っ!」 私は夜一様を見上げた。 すると、夜一様は私に覆いかぶさった。 唇が重なる。 続いて首に甘い感覚。 それはすぐに離されてしまった。 「砕蜂……儂等は住む世界が違うのじゃ……」 すまんの…最後、そう言われたように感じた。 今にも、泣きそうな顔でおっしゃるから。 夜一様は行ってしまわれた。 たんぽぽの綿毛が一つ。 多彩な草原から晴天の真っ青な空へ流れていった。 私の涙も知らぬまに、空へ散っていった。