言葉を紡いでいる
愛のために・・・・・



言葉を紡いでいる
儂のために・・・・・




その言葉一つ一つが
儂を幸せにする


その言葉一つ一つが
儂を闇から救った



もっと紡いで

もっと聞かせて




お主の言葉を




砕蜂・・・・・
また儂のために言葉を放ってくれぬか・・・・・・





Cat and Bee The your kind words saved me from dark. version:cat
気が付くと、寒さに身震いをしながら起きる時期になっていた。 「ん〜っっ・・・・今何時じゃ・・・・」 「今、5時・・・ちょっとすぎだよ・・・」 「あ゛〜そろそろ行く・・・・・」 ここ最近、毎日空鶴の家で飲んでいた。 空鶴から借りていた服を脱ぎ、猫の姿になる。 襖を開け、障子を開け外へ出る。 寒い寒いと思って居ったら、雪が降っておったのか・・・ いくらか積もった雪を眺めながら、儂は隊舎へと急いだ。 空鶴の家に通っていたのは、とあるイベントの打ち合わせのためだった。 暫く、瞬歩で歩き、隊舎へ近づいていく。 冷たい空気を切り抜けて行く。 寒い・・・ 本当に、凍りそうなくらい。 連日、砕蜂が朝早くから、隊舎に向かっているのは、知っていた。 じゃから、会えればと思って、儂は副隊長室の外を歩いたのだ。 「よっ夜一様……?」 やっぱり。居った。 儂は、砕蜂の方をゆっくり見る。 「砕蜂??ずいぶん早いのぉ………」 「あっはい。仕事がありますので…それより、夜一様こちらへ!」 「??何じゃ?」 「お風邪を召されたら大変です!!」 「大丈夫じゃっっへっくっしょいっズルズル」 「夜一様!」 「わっわかった…」 儂は、しぶしぶ砕蜂の方へ行った。 砕蜂は頑固じゃなぁ。 そんな事を思いながら、儂の事を思ってくれておる。 そんなことが、すごく嬉しかった。 嬉しさでほころぶ顔を隠しながら、儂は砕蜂の腕の中へ入った。 さっき、来たのだろう。 部屋は冷えていて、外とあまり温度が変わらなかった。 砕蜂は、儂の事を思って、座布団と毛布を出してきた。 「すみません。先程来たので……」 「いや。良い。」 「寒くはありませんか?」 「嗚呼。大丈夫じゃ」 可愛いのぉ。 素直に、そんな風に思えた。 だが、そのときの声のトーンが低かったのか。 砕蜂は、ちょっとふててしまったようだった。 「すまんのぉ……」 「え?」 「お主が悪いんじゃないんじゃよ。」 「……夜一様……」 唯、眠かった。 その理由がきっと、大きいのだろう。 だから、儂の声は低かった。 そう。自分なりの答えを出した。 儂は砕蜂も乗れるような話を切り出した。 「まったく、新しい部隊の集まりが悪いっ」 「そうですね。なぜ、すぐに集合できないのか…」 「そうじゃ!わかってくれるか!砕蜂!!」 「もっもちろんです!」 砕蜂は少し興奮して居った。 心配かけてすまないな・・・・・だが、もう少しじゃから・・・ 心の中で砕蜂に謝った。 皆が来るまでの時間。 儂等は楽しく話を交わして居った。 どうにかならんかな・・・ 儂は机の上に積まれた大量の書類を見て思った。 どうしたらいいんじゃ・・・・ 此処までためた自分も自分だと、少し反省をした。 こうなったら・・・助っ人を呼ばねば・・・ そう、思い、使いの者に助っ人を呼んでくるように頼んだ。 儂の部屋と真反対にある部屋の主の元へ。 暫くして、助っ人が来てくれた。 「砕蜂でございます」 「お――!!待って居ったぞ」 部屋に入るように言うと、砕蜂は入って来た。 机の上を見て、驚きを隠せないようじゃった。 「………ご用と申されますのは……」 「見ての通りじゃ!砕蜂。手伝ってくれぬか?」 「どうしてこんなになるまでほっているのですか!」 「仕方ないじゃろ……」 「仕方なくありません。まったく…連日、空鶴さんのところで飲んでいらっしゃるから」 「そう言わずに、手伝ってくれぬか?」 「……仕方ないですねぇ……」 「よし!!すまぬな砕蜂!」 「……いえ。」 多少、怒りながら、結局やってくれる。 砕蜂は誠にいい子じゃ。 「今日中に終わらせねばならぬのじゃよ。」 そう、言うと砕蜂は絶対終わらないという顔をして居った。 誠に可愛い。 そう思いながら、儂等は分担してたまりに溜まった仕事に手をつけた。 気が付くと、だいぶ日が傾いていた。 とは言っても丑時を過ぎた頃。 仕事は1/3程であろうか。 減っていた。 2人掛かりはすごいと思っておった。 「そろそろ休憩するかの」 「はい。」 「ちょっと待っておれ…」 儂は砕蜂に休憩用の物を持ってくるために、隣の部屋まで行った。 隣の部屋には、客用の饅頭やら果物やらが多く置いてあった。 どれなら、持って出てもばれぬかな。 此処を管理している者がとても厳しいやつじゃった。 だから、どれが持ち出されてもばれないか、思案した。 それで、目に付いたのが餅と蜜柑じゃった。 「悪かったのぉ」 「いえ……」 「ほれ。」 「これは……」 餅と蜜柑を見て、少し不思議な顔をして居った。 「冬の定番、蜜柑と餅じゃ。」 「……はぁ」 「火鉢に当たりながら食うかのぉ」 儂は蜜柑の皮を剥いてほおばった。 砕蜂は蜜柑と餅を見て、怪訝そうな顔をして居った。 儂の記憶じゃぁ、嫌ってはおらんかったはずじゃが・・・・ 儂の方を少し見つめて居るようじゃったから、声をかけた。 「どうした?嫌いじゃったか?」 「いえ。好きです…」 「そうか。よかった!」 儂が笑いかけると、砕蜂も笑い返してくれた。 その笑いは、少し恥ずかしそうで。可愛くて・・・ ずっと、傍に置いて置きたかった。 ずっと、放さないと思っておった。 大好きじゃった。 なぁ。砕蜂。 それから、私たちは餅と蜜柑を食べて、仕事を再開した。 仕事が一段落した頃。 12月ももう、下旬。寒さが、一段と増しておった頃じゃった。 正月休みを志願してくるものも多くなっていた。 仕事が終わり、儂は砕蜂と一緒に帰ろうと、砕蜂の部屋の前まで行っておった。 「よっ夜一様?どうかなさいましたか?」 「いや……一緒に帰ろうと思うてな…」 「えっ?」 「嫌か?」 「いっいえっお供します。」 砕蜂は嬉しそうな顔をしておった。 儂も思わずほころんだ。 外は雪が積もり、とても寒かった。 唯でさえ、寒いのに白い雪を見て、余計に寒くなった。 「寒いのぉ…」 「そうですね…」 空は日が暮れ、真っ暗じゃった。 雪は月の光を反射して、道は明るかった。 「今年は実家に帰るのか?」 「あ…いえ。帰りません。」 「そうか…」 今年は帰らないと、人づてに聞いては居ったが、きちんと本人から聞いておく必要があった。 今年のイベントは砕蜂のためであったから。 砕蜂が帰らないと言ったのを聞いて、ほっとした。 「じゃぁ、今年は年越しは一緒じゃな!」 「え?はっはい」 「そうかそうか……」 驚いて居ったが、頬を紅く染め、恥ずかしそうにして居った。 本当に可愛い。 こんな気持ちになるのは、砕蜂。お前だからじゃよ。 可愛いこの子をずっと傍に置いておきたかった。 大晦日。 儂は今日の日までに、空鶴と計画をしていた。 今日は絶対に成功させねば・・・ そう、意気込んで居った。 きっと、砕蜂が来るだろうから、手紙を書いて、目に付くところに置いて居った。 準備は一通りでき、儂は急いで空鶴の所に向かわねばならなかった。 「夜一様〜砕蜂です…」 「すまぬ。砕蜂!ちょっと急いどるのじゃ。」 「あっえっ?夜一様?!」 絶妙なタイミングで砕蜂が儂をたずねてきた。 あの手紙を読んでくれればいいのじゃが。。 そんな事を思いながら、儂は瞬歩で空鶴の家まで急いだ。 数時間して、例のイベントに使う物は儂等の予定時間よりも早く出来上がってしまった。 仕方ない。砕蜂を呼びに行くか。 呼びに行かなくても、手紙を読んでいれば、きっと来てくれる。 だが、本当に読んだのだろうか。 それは保障出来なかった。 じゃから、儂は呼びに行く事にした。 「砕蜂。ちょっといいかの…」 「はい。大丈夫です。」 儂は、ドアを開け、そっと入った。 中は片付いており、砕蜂の甘い臭いが漂っていた。 「何でしょう」 「特に用がある訳では無いのじゃが。」 どう、切り出していいか、いまいち分からなかった。 どうしよう。 心の中でそっと迷っていた。 「今から、少し大丈夫かの。」 「はい。大丈夫ですが?」 「じゃぁ、ちょっと儂について来て欲しい。」 砕蜂をなんとか、部屋から、連れ出して、儂は先導を切って歩いた。 儂等は、隊舎の上に居った。 空は、いい感じに暗かった。 「何ですか?」 「まぁ、見ての・・・・・・・・あ。」 「わぁっ・・・・・」 空からは、雪が、ふわふわ降ってきた。 寒いと思っていたら、この所為だったのか。 暫く空から降る、雪に惹かれていた ちょっとした脅かしまで後数秒。 「もうすぐじゃの。」 「え?そうなんですか?」 「あぁ。……5……4…3…2……1!砕蜂!あそこじゃ!」 「え―――っ!」 儂は勢いよく6時の方向を指差した。 その場所は空鶴の家の方。 遠くの見えない打ち上げ台から花火がドォォォンと低い音と共に咲いた。 頼んでおいた、猫の形と蜂の形もあげてもらった。 「夜一様…これは……」 「去年はようやってくれた。これは儂からのご褒美じゃ。」 砕蜂は驚いておるようじゃった。 じゃが、ふと見ると、涙が溢れて止まらなそうだった。 「あっありがとうっございます…」 「これこれ。泣くな。」 「うぇ――っ」 儂の胸の中で砕蜂はわんわん泣いた。 頭を撫でながら、儂は可愛い砕蜂を眺めた。 「あ。夜一様。これ…良かったら使ってください…」 「ん?何じゃ。」 一通り泣いたら、儂に砕蜂は何か渡した。 綺麗に包まれた包み紙をそっと開ける。 「ほぅ。襟巻か…鮮やかな橙色じゃなぁ」 「はい。夜一様はお持ちになって無かったので…」 「ありがとう。使わせていただくぞ。」 愛らしい想いがこもった襟巻きをそっと巻いた。 「なぁ砕蜂…」 「はい…」 「好きじゃよ…」 さらりと言えたのは、襟巻きのおかげじゃろうか。 それとも、誕生日の所為じゃろうか。 砕蜂の答えが怖かったのは事実あった。 自分の告白が冗談に思われたんじゃないかと。 じゃが、そんな思いを吹き飛ばしてくれたのが、砕蜂の一言じゃった。 「私も好きです…」 花火の火花が、雪に映りキラキラ光が綺麗だった。


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