いつからじゃろう。 お主のことが気になるのは・・・・ いつからじゃろう。 お主のことを愛しいと思うのは・・・・ いつからじゃろう。 お主が傍に居ないと落ち着かないのは・・・・ 遠い 遠い昔のことで すっかり忘れてしもうた なぁ砕蜂。 お主は元気かのぅ。Cat and Bee That's something that happened in the distant past. version:cat 「いいか。夜一。お前は将来『刑軍』の長に・・・・」 いつも、つまらん作法や刑軍の話。 儂がその場所に行くのは、よぅ解っておった。 そのための辛い修行もいつも、こなしていた。 だが、儂は当主の話が嫌いじゃった。 一度だって、儂の話をまともに聞いてくれた事が、無かった。 だから、砕蜂の話を聞いたとき、本当に嬉しかったのを、覚えておる。 「儂よりも、幾つか下の女子じゃと??」 儂の周りにはいつも、男ばかりじゃった。 じゃから、興味がかなりあった。 女子と聞いただけで、すごく期待に胸を躍らせていたのを、覚えている。 「この砕蜂。これから心身のすべてを奉げ、軍団長閣下をお守りし―――」 「おいおい。『閣下』は止せ。もっと砕けて呼んで良いぞ。夜一さんとか・・・」 「めっ!滅相もごっございませんっっ」 「・・・・・・」 唯一の女子じゃったから。 儂の傍に居てくれる、唯一の女子じゃったから、儂はもっと仲良ぅしたいと思ったのじゃ。 それでも、お主は・・・ 「では・・・・夜一様と・・・・お呼びしてもよろしいですか?」 堅いやつよのぉ。 儂からの第一印象はそうじゃった。 本当に堅いやつじゃったが、本当に可愛いやつでもあった。 可愛くて、可愛くて。 儂の本当の妹のように感じておった。 ずっと、一緒に居たいと思っておった。 本当にそう思っておったぞ?砕蜂。 ある日の昼下がり。 儂は砕蜂を呼んだ。 「砕蜂〜!」 「夜一様・・・どうしたんですか?」 突然、呼ばれて、驚いている様子じゃった。 儂は砕蜂に云った。 「あれ!取ってくれぬか?」 「あれ・・・ですか?」 砕蜂は儂よりもはるかに小さい。 そんな砕蜂に儂の背よりも高い棚の上にある、箱を取れと云ったのは訳があった。 きっと、砕蜂は不信感を抱きながら、取ったんじゃろうな。 まぁ、小さな砕蜂のための台も、あらかじめ用意はしておったから、いいか。 「っと。これですか?」 「そうじゃ。ご苦労。」 砕蜂は、小奇麗に包装された箱を、手に取って、儂に渡して台から降りた。 儂に渡さんでも、持っておればいいのに・・・・ ちょっと、考えていたシチュエーションと、違ったので、ショックじゃった。 「なんですか?それ・・・」 「おぬしへの進物じゃ。」 「しっ進物ぅ!!!!????」 驚いた顔も、また可愛い。 さっきから、百面相を見ているようで、楽しかった。 かなり驚いている様子じゃった。 「お主、この前誕生日だったじゃろう?」 「はっ・・・はいっ!」 儂は箱を、砕蜂の方に傾けて、渡そうとした。 「それに、儂にもくれたではないか。その返しじゃ。」 「めっ滅相もございませんっっ!!・・・それに私如き・・・」 砕蜂は下を向いた。 儂は、ちょっと悲しかった。 儂が『軍団長』という名を背負っておる故の態度。 どこか、余所余所しい感じが、本当に嫌いじゃった。 否。今も、嫌いじゃな。 砕蜂にはそんな態度を、取ってほしくなかった。 じゃから、もっと砕けて呼んで良いと・・・ 儂の声のトーンは、少し低かったのかもしれぬ。 儂は、砕蜂に問う。 「受け取ってくれぬのか?」 「エッ!!?」 「先ほどのお主の話を聞いていたら、そう思うであろう?ほれ。持っておき。」 「・・・・・」 此処まで云って、受け取らぬ砕蜂はひょっとして儂のことが嫌いなのかと、一瞬焦った。 儂だけが、一人で浮かれているのかと、恥ずかしくなった。 だから、ちょっと意地悪したのじゃ。 「儂が渡す物はもらえぬのか?」 「そっそんなことありません!!」 この一言は、本当に効いたらしい。 砕蜂は手汗を袴で拭い、箱を受け取ってくれた。 本当に可愛いのぉ。 砕蜂の行動が、砕蜂の表情、一つ一つが本当に可愛く思えた。 頬を紅く染め、儂に云う。 「ちょっ頂戴しますっっ」 「よし!ほれ。誕生日おめでとう。砕蜂」 「・・・・・・ありがとうございます・・・・」 照れた顔もまた、可愛いと、再び思ってしもうた。 あの、箱の中身はというと、刑戦装束と二番隊の副官の証である隊章だ。