耳を澄ませば聞こえる お主の笑う声が 耳を澄ませば聞こえる お主の可愛い声が 耳を澄ませば聞こえる お主が儂を呼ぶ声が 甘く退屈の無い、お主との思い出が次々と思い出される 砕蜂・・・・・ 儂は昔に戻れるものなら 戻りたいと思って居るんじゃよ・・・・Cat and Bee That were sweet days that thought honey. version:cat 「祭り?」 任務が始まるほんの数十分前。 喜助が儂の隊舎まで来た。 用件は、報告書の提出は明日という、知らせを言いに来たのだ。 「そうっす!!今日の6時ごろからあるんっすよ〜。」 「そうか・・・・」 最近は、任務続きで、丁度疲れが溜まっていた頃だった。 きっと、あやつも、身体を休めて居らぬだろうと、容易に想像できた。 近日。儂は砕蜂を二番隊の副隊長に任命した。 だから、あやつも、きっと色々大変だろうと、容易に想像ができたわけである。 「アタシも、店出すんでよかったら買ってくださいね♪」 そんなことを言いながら、喜助は、儂の部屋・・・否。二番隊隊長室から出て行った。 祭りかぁ・・・何年・・・いや・・・何十年ぶりだろうのぉ・・・・ 窓から見える空を眺めながら、少し、考えていた。 任務が終わり、砕蜂をすぐに呼んだ。 すぐに呼んだのは、悪かったかと思い返すのは、ずっと後になってからじゃった。 「お呼びでしょうか。夜一様。」 砕蜂の声は、少し緊張しておった。 いつも、任務の後は、儂と反省会をして居るから、それだと思って居るようじゃ。 「砕蜂」 儂は、勢いよく襖を開けた。 「祭りにいくぞ!」 「・・・・・・え?」 儂は、砕蜂に有無を言わせまいと、さっさと浴衣に着替えて、祭りの用意をしておった。 砕蜂は、おどおどしながら、儂を見上げておった。 驚くのも無理はないじゃろう。 なんたって、儂がこんな姿じゃから。 「さぁ!砕蜂!!着替えじゃ!」 「えっえぇぇえ!!!?夜一様!!?」 儂は砕蜂の腕を掴み、自分の部屋へと、連れてはいる。 部屋はいつも割りと、綺麗にしている。 何時、砕蜂が来ても良い様に。 「・・・・儂のお古で悪いがのぉ・・・・・お主に似合いそうなのがあるんじゃ。」 儂は幼少の頃の箪笥を開け、探した。 近日、片付けをしていて、丁度、砕蜂に似合う浴衣を見つけたのじゃ。 着て貰いたいというのは、只の儂の自己満足に過ぎんじゃろうが。 数分後。 砕蜂はすっかり、儂の浴衣を着こなしておった。 ずいぶん前から、自分が持っている一つの持ち物のように。 「やっぱりのぉ!よう似合う!!」 「よっ・・・・夜一様??・・・・・」 「あ!そうじゃのぉ!ほれ。見てみろ。砕蜂」 「・・・・・えっ・・・・」 大きな背鏡を砕蜂に向けてやる。 昔、儂が着ていたときよりもずっと、綺麗じゃった。 「やっぱりのぉ!良く似合って居るぞ砕蜂!」 「えっ・・・あっありがとうございます・・・・」 儂が、見とれて居ると、砕蜂の表情はこわばっておった。 自分には、似合わないのではないか。 そう考えている顔じゃった。 そんな訳、はないじゃろう? お主に似合わぬ、着物がどこにあろうか。 儂は、心の中で、そうつぶやき、砕蜂に言った。 「…儂には、その浴衣は似合わんのじゃよ。」 「??」 昔。未だ儂が幼かった頃。 儂の母上が作ってくれた。 母上は、「似合う、似合う」と申してくれたが、正直に合ってなかった。 あの紺の色は、儂の肌の色には合わないのじゃ。 砕蜂の白い肌だからこそ、似合うのじゃ。 紺は、母上の好きな色だった。 少し嫌な空気になったから、儂は切り出した。 「さぁ、支度ができたな!行くぞ!!」 「はい!」 儂は砕蜂の手を取り、繋いだ。 「逸れぬように、付いて来いよ。砕蜂・・・」 「はっはい!夜一様……」 そう言った時の、砕蜂の赤い頬を覚えておる。 あの、手のぬくもりも、未だ覚えておる。 すまんな・・・・・砕蜂・・・・・・・ しばらく、歩くと、出店が陳列している、通りに出た。 多くの者が、その場所に居った。 「夜一さん!これ食べてってくださいよ〜!!」 そう言って、喜助はイカ焼きを儂に売りつけようとしてきておった。 「お主の焼くイカ焼きはイマイチ信用できんのぉ。。喜助。」 「そう言わずに〜。あ!砕蜂ちゃんもいかがっすか?」 「結構」 「二人とも、つれませんねぇ。」 喜助が設立した、技術開発局。 これは、イマイチ信用できぬ。 第一、あのイカはイカに見えなかったしのぉ。 砕蜂も儂も、久々の休みじゃった。 じゃから、砕蜂には楽しんで欲しかった。 それが本音じゃった。 「砕蜂?何が食いたい??」 「えっ!!?」 「今宵は、儂がおごってやるぞ?何がいい?」 「えっいっいいですよ!!?自分で払いますっっ」 すごく、驚いておるようじゃった。 「いいから!何が良いんじゃ?」 「・・・・・では・・・・氷が良いです・・・・・」 「良し!」 可愛い、妹に何か与えてやる。 そんな気持ちに似て居ったのを、覚えて居る。 すごく可愛くて、何かしてやりたかった。 だから、氷の屋台に走って行ったんじゃ。 儂の氷は『檸檬味』。 砕蜂の氷は『イチゴ味』じゃった。 イチゴにしたのは、砕蜂のイメージじゃった。 赤くて小さいところが、砕蜂を連想させた。 「どうじゃ?」 「おいしいです。ありがとうございます!」 「ありがとうついでに、一口くれるかの?」 「どっどうぞ!」 儂は氷を一口分すくって口へ運んだ。 「甘いのぉ〜イチゴは・・・」 「そうですかね?」 「じゃぁ、こっちも食べてみろ。」 「えっいいんですか?」 「いいから、言っておるんじゃろうが。ほれ。」 「!!////」 今まで儂が使っておったスプーンで、儂の氷をすくって砕蜂の口に放り込む。 「どうじゃ?甘くないじゃろ?」 「・・・・はい・・・・」 砕蜂は、よっぽど驚いて居ったのだろう。 顔を真っ赤にして居った。 可愛いのぉ。本当に。 儂は素直にそう、思う事ができた。 それは、きっと相手が砕蜂だからじゃろう。 「イチゴは甘いのぉ。」 「・・・・」 紅い彼女の顔は、赤いイチゴを思い出させた。 じゃから、儂はああ言ったんじゃろう。 自分でも、何故あの言葉が出てきたのか、不思議じゃった。 儂等は、並んで歩き出した。 さまざまな出店を見ながら。 砕蜂の頬は、未だ赤みを帯びていた。 じゃが、一緒に来た頃と同じぐらいの紅さまで、引いていた。 「砕蜂。林檎飴食うかの?」 「えっはっはい!」 砕蜂はあまり儂と顔を合わせようとしなかった。 ちらちらと、たまに儂の顔を覗いて居ったが。 それもまた、可愛いと、思っていた。 可愛い。本当に可愛いと。 大切にしたいと、心から思ってしまった。 「砕蜂!!見てみろ!!」 「わぁっっ」 低い大きな音と共に、綺麗な火の花が咲く。 砕蜂と来てよかった。 本当に、楽しかった。 ありがとう。儂に付き合って来てくれて・・・・・・ 本当に。 心から休まるような。 心から幸せな気持ちに成れた。 甘い。甘い日々。 それは、蜂蜜のように。