大きな愛を

いつも儂だけに向けてくれた





大きな愛で

いつも眩しい笑顔を向けてくれた




大きな愛で

いつも儂を求めてくれた





お主のことが好きで好きで

大切に大切にしたかった

言葉では表現出来ないほど好きで


体中がお主を必要としている








お主を置いていく時

本当に胸が痛んだ




砕蜂………

今でも儂はお主を愛しておるぞ




もう一度だけお主を愛してもいいかの?










Cat and Bee The love ached badly that thougt rose's thorn. version:cat
花々は咲き乱れ。 儂等の周りの空気も温かみを帯び始めた。 朝、起きて布団から出るのを憚っておったが、空気が暖かくなり、そう言うこともなくなった。 砕蜂に告白した時、本当は拒絶されるのではないかと思っていた。 そんな事を言う儂の事は嫌いだと。 そう気にさせるのも、全部相手が砕蜂だからだ。 気がつけば、足は砕蜂の居る、服隊長室に向っていた。 「砕蜂!」 「夜一様っ!どうなされたんですか?」 「いや。別にたいした用事は無いのじゃ。…唯…」 「唯?」 「顔が見たくてな。」 「!!!」 本当の事を言ったら、砕蜂は素直に顔を赤らめた。 本当に可愛いやつである。 「お?うれしいか?砕蜂…」 「ちっ違いますっ!」 「そう言うな!うれしいんじゃろ?」 「違いますってばぁっ!」 今日は、ツンDayじゃったかな。 少し、ツンな砕蜂の態度に、少し悩む。 でも、それは、ちょっとした冗談のようじゃった。 「それにしても…いい天気じゃのぉ」 「…はい…」 暖かい陽気が儂等を包む。 近くの木に小鳥が止まっていた。 「砕蜂。少し散歩に行かぬか?」 「えっですが、仕事が……」 「相変わらずお堅い奴よのぉ」 「夜一様っ!」 「大丈夫じゃ。置き手紙はしてきた。」 「置き手紙ですか!?」 砕蜂に断られないように、儂は先手を打っておった。 絶対、一緒に出かけたかったから。 いつも、儂のわがままなのは良く分かっておる。 でも、これも、それも全部。 砕蜂と少しでも長く一緒に居たい、と言う思いからなのじゃ。 ごめんな。砕蜂… 「仕方ないですね…」 「よしっ!さぁ参るぞ!」 「あっ夜一様っ!」 儂は、砕蜂の腕を引いて先を行く。 砕蜂。しっかりついて来いよ。 そう。ひそかに思いながら、儂等は散歩へと出かけた。 暫く歩くと、儂の大好きな場所についた。 そこは、草原のようなところ。 瀞霊廷内だとは思わせない、自然に囲まれた場所。 儂も、先代に教えてもらった、秘密の場所じゃった。 「綺麗ですね…」 「嗚呼……」 時期が時期なため、そこは一面に草花が咲き乱れていた。 「ちょっと歩くかのぉ…」 「はい」 儂等は手をつなぎ、歩き出した。 花々を踏みつけないように、慎重に。 「もう、花見の時期じゃのぉ」 「そうですね…」 暫く一緒に歩いていると、桜の木の下についた。 桜は満開で、儂等の方に綺麗な花びらを散らしていた。 「……」 「……」 儂等は沈黙した。 綺麗な桜に息を呑んだのも、そうだが、砕蜂との別れが近かったから。 本当に、泣きそうになってしまった。 少しでも、長く、近くに居たい。 もっと、傍におってやりたい。 そんなことも、叶わないのか… すまない。砕蜂…好きだから、連れていけないんじゃ… そんな儂の気持ちに勘付いたのか、砕蜂は儂の手をギュッと握った。 「砕蜂?」 「……遠くに行かないでくださいね……」 「……何を言っておるのじゃ……」 儂は精一杯微笑んだ。 それしか、今の儂には出来なかったから。 「儂がお主を置いて、どこかに行くものか……」 「……」 「……行くときは一緒じゃ……」 「夜一様……」 その場しのぎの嘘をついた。 心が重く、苦しかった。 砕蜂が好きじゃ。 好きだから、傷つけたくなかった。 告白自体が間違って居ったのかもしれない。 傍に居られる時間が限られていたのに、儂は自分の欲求のために、告白した。 本当にすまぬ。砕蜂。 こんな思いをするのは、儂だけで十分じゃ。 なぁ。砕蜂。 日もすっかり沈んでしまった頃。 儂は砕蜂の部屋をたずねた。 「砕蜂…ちょっといいかの?」 「はい…どうぞ。」 儂は、そっと襖を開ける。 砕蜂の臭い。 ここに居るだけで、幸せな気持ちになれた。 「砕蜂。一緒に眠らぬか?」 「はい……えぇえ!?」 もう少ししか一緒に居られない、じゃから、儂は砕蜂の傍に居たかった。 どこに居ても考えるのは、砕蜂の事だけだった。 どこに居ても思うのは、頭を支配するのは、砕蜂のことだけだった。 「嫌…か?」 「いっいえ。決して嫌なわけでは…」 「じゃぁ、決まりじゃ。儂の部屋まで来てくれ。」 「え?何故です?」 「砕蜂の寝台は小さいからのぉ。じゃぁ待っとるぞ。」 砕蜂の言葉に、本当に舞い上がりそうなくらい喜びながら、儂は帰った。 本当に嬉しかった。 お主の言葉一つで、儂の気持ちなんか、どうにでもなる。 お主の一言はすごく大きな力を持って居るのじゃ。 儂は砕蜂の部屋を出た。 廊下には月の光がすべるように、当たっていた。 儂は間違って居るのかの? 答えの返ってこない空に向ってそっと投げかけた。 「夜一様……砕蜂です」 「おぉ!入れ」 「失礼します。」 砕蜂が恐る恐る入ってきた。 そんなに恐れるものなんかこの部屋には、無いのに。 「さぁ。おいで。砕蜂……」 「……はい……」 儂は寝台の上から、手でこまねく。 砕蜂はゆっくりこちらに歩いてきた。 緊張しているのか。 顔がこわばって居った。 それに負けないくらい顔の赤みはすごかった。 「どうした?来ていいぞ?」 「……はい……失礼します。」 儂の転んでいる方に引き寄せる。 砕蜂はそっと入ってきた。 「砕蜂…」 「はい……」 その返事は、了解と言う事でいいのだろうか。 少し不安に思いながら、儂は砕蜂に接吻する。 一生、体に残る感覚。 相手が砕蜂だから、本当に嬉しかったのかもしれない。 忘れられない、甘い感覚。 それは、儂の胸の中に。 その日は、砕蜂に先に帰るよう言われた日だった。 砕蜂は仕事が残っていると言って、隊舎にこもっていた。 儂は、二番隊の隊舎の近くの道の角で、喜助と話をして居った。 その話とは、今度の喜助の逃亡の打ち合わせ。 儂は彼を助けるために、手を貸すことにしたのだ。 「本当にいいんっすか?夜一サン…」 「あぁ。いいのじゃ…」 喜助は、儂に遠慮しておるようじゃった。 儂は、全く気にはしておらんかった。 でも、喜助の言っていることは、儂についての事ではなく、砕蜂についてのことじゃった。 「砕蜂ちゃん……泣きますよ?きっと……」 砕蜂が泣く… そうか。 儂のために涙を流してくれるかもしれなんな。 「あぁ。わかっておる……でもな喜助…あの子は…」 「……?」 「あの子には…日の当たる人生を歩ませたいんじゃよ…」 好きだから、連れて行けない。 好きだから、傍に置いていられない。 それは、好き故の悲しいこと。 そもそも間違って居ったのかもしれぬ。 儂が砕蜂に恋心を持った事が。 「夜一サン……」 喜助がわずかに後ろを見て言った。 分かって居る。 儂は、目で答えた。 後ろに居るやつのことは、分かって居った。 「夜一サン…明日は…」 「あの場所から行くんじゃろ。わかっておる。」 「そっすか…じゃぁまた。」 「嗚呼。」 「おやすみなさい」 喜助はそう言って、帰って行った。 すまんの。喜助。 それと… すまんの。砕蜂。 後ろに居る、砕蜂に思いながら、儂はその場に立っておった。 そう、心の中で謝り、儂も部屋に帰った。 「夜一様…」 「どうした砕蜂……」 夜、儂を砕蜂がたずねてきた。 先ほどの話の意味を聞きに来たのだろうか。 儂はそんな事を思いながら、未だ廊下の向こうに居る砕蜂に声をかける。 「入れ……」 「失礼します。」 今にも泣き出しそうな顔をして居った。 「どうした?」 「……一緒に寝ていいですか?」 「……あぁ。来なさい。」 儂の方に来るように、促すと言うとおりこちらに来た。 不安そうに、顔を悲しみの色に染めて居った。 「何かあったか?」 「……いえ。傍に居たいんです……貴女の傍に……」 砕蜂は儂の腕にギュッと抱きついた。 すまんの。砕蜂。 砕蜂は分かっておるようじゃった。 明日の旅立ちの事を。 もう、一生会えないかもしれないということを。 「どうした?今日は甘えたじゃのぉ…」 「……」 砕蜂の頭をそっと撫でた。 もう、こんな風に一緒に眠ることもないだろう。 儂をこんなにも好いてくれている、愛しいこの子を置いては行きたくない。 それが本音なのだが、そんな事は言えない。 「……砕蜂?」 儂を見上げたその瞳には、涙が溜まっていた。 本当に、儂はなんて罪深いやつなんじゃろう。 お主を泣かせてばかりじゃ。 「……愛しておるぞ…砕蜂……」 「…本当ですか?」 「あぁ。証拠を見せてやるぞ……」 唇を寄せる。 もう、傍に居られない事実を心に隠し。 砕蜂を抱く。 砕蜂だけが居れば、儂はもう、何もいらない。 でも、これは儂だけの問題じゃないんじゃ。 すまない。砕蜂… 心の中で何度も謝りながら、砕蜂を抱いた。 日の出が近づいていた。 儂は、日の出より少し早く起きて、砕蜂を部屋へ運ぶ。 すまない。砕蜂・・・・ 儂は一生、許されないかもしれない。 でも、それでいいのじゃ。 すべて、儂が背負って生きよう。 いやな事は全部、儂が背負おう。 儂を恨め。 儂が全部を背負うから。 これは、砕蜂を好きになった儂の宿命なのじゃ。 お主だけには、甘い夢を見ていてほしい。 きっとお主は儂が、「黒」を「白」と言ったらそのように言うだろう。 だから、連れていけないんじゃ。 「すまない。砕蜂…」 儂は、砕蜂の部屋から出た。 甘い香りがする部屋から、花の香りのする場所へ急ぐ。 今頃。 儂の書いた手紙を読んで居るころじゃろうか。 砕蜂と一緒に散歩に来た花畑に来ていた。 此処から、喜助と一緒に出る予定じゃったから。 儂は空を見上げた。 空には、青色のベースに白い雲が流れていた。 「夜一様ぁっ!」 唐突に後ろから、儂を呼ぶ声が聞こえた。 聞きなれた、彼女の声。 「砕蜂?」 どうして、此処が分かったのか。 それが謎だった。 「………はい」 砕蜂は少しこちらに歩み寄った。 「私も……私も連れていってください!!」 「…砕蜂」 そう。それが怖かったのじゃ。 儂も連れていけるものなら、連れて行きたい。 でも、無理なんじゃよ。 これ以上、罪人を増やすわけにはいかないんじゃ。 「……無理じゃ…」 「お願いです!連れていってください!!私もっ」 砕蜂は叫んでおった。 儂に縋るように。 その叫びが儂の心に刺さった。 「…無理なのじゃ砕蜂……」 「夜一様っ!!」 砕蜂はこちらへずんずんと足を進めてきた。 儂の手を掴もうとしてたが、儂はかわし代わりに砕蜂を捕まえた。 「夜一様っ!」 砕蜂が、儂を見上げた。 それを見計らって、儂は唇を重ねる。 加えて、首筋にも唇を当てる。 今にも泣きそうな顔。 でも、すごく驚いている顔じゃった。 「砕蜂……儂等は住む世界が違うのじゃ……」 すまんの… それは、言葉に出来なかったが本当の気持ちじゃった。 砕蜂を置いて、儂は行った。 「夜一サン……」 「分かって居る…わかって…」 目からは、涙が溢れて止まらなかった。 取り返しのつかない事をした。 でも、それは仕方なかった。 涙で濡れたまぶたの裏には、砕蜂の泣き顔だけが浮かんでいた。


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