第二部 「ただいま……」 空座町市内に梢綾がホームステイしている、親戚の家がある。 「お帰りぃ〜砕蜂ちゃん♪」 そう言って出てきたのは、白髪で狐目の長身の男である。 「市丸…いちいち出てくるな…」 梢綾は睨みながら、靴を脱いで玄関をあがった。 「そいなこと言わんでもええやんか〜」 市丸は梢綾から鞄を受け取りながら言う。 梢綾は階段を上って自分の部屋に向かう。 市丸はその後を追っていた。 「それよりどないやった?学校は。」 「あぁ…思ったよりもいいところだった…って何だこれは―――!」 「梢綾」の文字が書かれた部屋をあけたところ。 そこは壁紙から布団カバー、ベット、机、椅子、テレビ、パソコン、コンポ…すべてがピンクに染まっていた。 「…ど―いうことだ!朝とは全く違うだろ!何をどうしたらこうなる!言ってみろ!」 梢綾はかなりキレている。 市丸に向かって怒鳴り散らしていた。 「えっええやんか。可愛い〜やん。なんでそないに怒るん?」 「あ゛――――――っ!!!!!!!!!!!ここまで(蜂の置物)ピンクにするな!!!!!!」 梢綾は蜂のグッズが好きらしく、部屋の中の大半の物は蜂のグッズだった。 梢綾は一応中に入って色々見てみたらしい。 「可愛ええやろ?蜂さんもピンクで〜♪」 「明日、私が帰ってくるまですべて元通り直しておけ!解ったな!」 そう言って階段をドスドスと降りていった。 「なんであんなに怒るんやろ…こないに可愛ええのに…」 市丸は梢綾の部屋の中を見ながら言った。 梢綾が玄関まで降りた時、ちょうどドアが開いた。 「お〜砕蜂。帰ってたの?」 それはクラスが同じの金髪の女の子だった。 「ああ…さっき帰ってきた。」 「そうなんだ…。あら?あの人どうしたの?かなり沈んでるけど…」 「あ゛〜乱菊お帰り〜」 階段の上の市丸を見ながら、乱菊は言った。 「あぁ…気にするな。」 「…まぁ…あえてその格好には突っ込まないわ。」 二人は、リビングに向かった。 乱菊は市丸の着物姿を見て言ったのだろう。 「なっ何でやの!?着物は別にええやんか―!ちょっ!乱菊っ乱菊さん?風情があるやろ〜?」 市丸も二人の後を追って部屋に入った。 「で?どうだった?学校は。」 三人は、市丸が作った夕食のパスタを食べていた。 乱菊がパスタを食べながら梢綾に聞いた。 「……貴様等…同じことを聞くなぁ…」 「だって今日は砕蜂の初登校日よ?気になるじゃない。」 「せやせや!で。居ったん?探しとった子は。」 梢綾はフォークを机の上に叩きつけて言った。 「"子"ではない!"お方"だ!」 「はっ…はい…すんません…」 市丸はかなり驚いている様だった。 梢綾はその謝罪を聞くなり席に座る。 「…私が探していた方はいらっしゃった。」 「会ったの?」 「ああ…たまたまだがな…」 梢綾はパスタを見ながら答えた。 「あの方が、私が前世から探していた方だ。」 「砕蜂の霊能力はやっぱりすごいわね。」 「砕蜂ちゃんやもんな〜」 「当然だ」 梢綾は霊能力があるらしい。 乱菊と市丸はそのことを知っているようである。 「じゃぁ、本当に今回は親子喧嘩じゃないんだ。」 乱菊が梢綾のほうに身を乗り出して尋ねた。 どうやら梢綾は親と喧嘩をしたら、日本のこの市丸の家に来るらしい。 「あっ当たり前だっ!」 顔を赤くして梢綾は怒った。 「そいやぁ〜砕蜂ちゃん。その探しとったちゅう、"お方"は何て名前なん?」 「あっああ…四楓院 夜一様だ。」 「しっ四楓院 夜一ぃ――――!?」 乱菊は夜一の名前を聞くなり、絶叫した。 「なんだ…うるさい…というか、呼び捨てにするな!」 梢綾に抜かりは無かった。 「どないしたん?乱菊…」 「あんた!四楓院 夜一って本気で言ってるの!?」 「だから様をつけろ!」 呼び捨てがかなり気になるようである。 「本気で言ってるの?」 乱菊の勢いは収まらない。 仕方なく梢綾は折れた。 「…ああ。本気も本気。当たり前だろう。」 「そっそう…」 乱菊はしばらく俯いて考えていた。 「どないしたん?乱菊。」 「何か問題があるのか?」 乱菊は梢綾の方を見ていった。 「四楓院 夜一お姉さまと言えば、空座町女学校のみんなが憧れてる、才色兼備!」 「……え?」 乱菊は椅子から立ち、目を輝かせている。 「頭もいいしスポーツ万能なのに、学校にあまり来ない不良…いや不良なんて汚れたものじゃないわ!」 「ちょっ乱菊?」 「……」 梢綾は口があいてふさがらないようである。 「その四楓院 夜一お姉さまが、砕蜂の探してた人だなんて…」 乱菊は梢綾の方を向いた。 「応援してあげるから、私を四楓院 夜一お姉さまに紹介して!」 乱菊は、いつになく必死であった。 「あっ…あぁわかった…」 「やった―!!ありがとう砕蜂!」 「ちょっちょっと乱菊?乱菊にはオレが居るやないか〜」 乱菊と市丸はつきあっていた。 それのつきあいは梢綾が日本によく来るようになったときには、もう始まっていた。 だから、梢綾はこの二人がどれくらいの期間つきあっているのかしらない。 「それはそれ。これはこれなの!」 「なんやねんそれ…」 (そうか…さすが夜一様だ…) 梢綾は密かに誇らしく感じていた。 乱菊と市丸はまだ言い合いを続けている。 まだまだ夜は長くなりそうである。 第二部完