第三部 小鳥が鳴く声で梢綾は目をさました。 昨日は、自分の部屋では寝れないので、乱菊の部屋に布団を敷いて寝た。 時計はもう7時を回っていた。 「おい。乱菊。朝だぞ。」 乱菊が寝ているベットに向かっていた。 「ん――――っ解ってるぅ…」 そう言ったので、梢綾はリビングへ降りていった。 リビングには既に市丸が起きていて、朝食の支度をしていた。 「あ。おはようさん。砕蜂ちゃん」 「ああ。おはよう」 朝食が出そろうのを待って、梢綾は食事ひ始めた。 「今日も学校やね。乱菊と行くん?」 「あやつの支度が出る頃に出来ればな…」 梢綾は2階を見上げながら言った。 「あははっさいか。乱菊は寝坊の常習犯やからなぁ〜」 「まったく…あんなのではいけないぞ…」 梢綾は早々に食事を終わらせ、学校へ行く支度をした。 乱菊の部屋を出る前に声をかけた。 「早くしないと遅刻するぞ?」 「先行っててぇ……zzz」 (まったく…) 梢綾は部屋のドアを締めて家を出るため玄関へ行った。 「行ってらっしゃい。砕蜂ちゃん」 「解ってるだろうが…私の部屋を帰るまでに直しておけ」 「わっ解ってるよそれくらい…」 明らかにうろたえていた市丸は、覚えていなかったようだ。 「覚えてるならいいけどな。」 睨みを効かせて、梢綾は家を出た。 学校までは、徒歩20分。 そんなに近いわけでも、遠いわけでもない。 「あ!梢綾ちゃんおはよ〜」 「おはようございます」 「おっおはよう…」 一人で行っていると、やちると七緒に出くわした。 2人は一緒に登校しているようだ。 「梢綾さんはこの辺りなんですか?」 「あぁそうだ…」 「そうなんだ〜!しんせきのお家にすんでるの?」 「うん…血のつながりは直接無い、遠い親戚の家に今居る」 周りには徐々に空座町女学校の制服を着た生徒が増えてきた。 「そうなんだ〜」 「2人はいつも一緒に学校に行ってるの?」 「うん!そ〜だよ〜」 「そうなんです。なんせ家が隣なもので…」 「そうなんだ!それはすごいな…」 七緒は苦笑しながら言った。 「幼稚園、小学校、中学校、高校と…全部同じなんですよ。しかもずっと同じクラス…」 七緒の目にうっすら涙が見えた。 「そうなんだよ〜!あたしたち、すごく仲良しなの〜」 ね〜っと七緒の方をみて顔を傾げながら微笑む。 七緒も仕方なく微笑む。 (この人はずいぶん苦労しているんだなぁ…) ご愁傷様と、心の中でつぶやいた。 学校についたとたん、様々な人が梢綾の周りによってきた。 「貴方?留学生って…」 「お友達になろ〜」 「中国ってどんなところなの〜?」 「ちょっ通してくださいっ」 「も〜っそんなにいっぺんに話し聞けないし〜!聖武天皇じゃないんだから〜っ」 「委員長!それを言うなら聖徳太子です!」 梢綾とやちると七緒は周りの生徒にもみくちゃにされ、身動きが出来なかった。 前に進むことも後ろ退くことも全く出来ない。 正門から下駄箱までの道の真ん中にこの人溜まりが出来ている。 とても迷惑である。 「何を騒いでおるのじゃ」 突然声がかけられた。 梢綾ははっとした。 その声の持ち主が… 「よっ夜一お姉様!」 四楓院夜一だったからである。 「いったい何事だ。この騒ぎは…」 夜一が分け入ると、周りの生徒は黙り、道をあけた。 夜一は梢綾たちの傍まできた。 「おはよう。梢綾」 「おっおはようございますっ」 梢綾は随分緊張しているようだ。 「ほれ。皆。時間を見んか。もうすぐ予鈴がなるぞ?」 夜一の言葉で時間をみた生徒は、「あら、大変だわ」と自分の教室へと急いでいった。 「とんだ災難じゃったのぉ。」 梢綾の方を見ながら言った。 慌てて梢綾は頭を下げる。 「あっありがとうございました!」 「礼には及ばんよ。それより今日の昼、一緒に食べんかのぉ?」 「えっ」 梢綾の顔は見る見る赤くなっていった。 「はっ…ごっごっご一緒して宜しいんですか?」 「当たり前じゃ。梢綾。お主何組かの?」 「びっびっB組です」 「わかった。じゃぁ昼休みにな」 「はっはい!」 夜一は歩いて先に校舎に入ってしまった。 取り残された梢綾とやちると七緒はボーっと固まってしまっていた。 3人は予鈴が鳴ってから教室に急いだ。 第三部完